会長挨拶
このたび、日本精神保健看護学会第33回学術集会・総会を「精神保健看護がめざす多様性と包摂性の実現に向けて」のテーマにて、来る2023年5月13日(土)・14日(日)の両日に亘り、兵庫県神戸市で開催する運びとなりました。
日本精神保健看護学会は、精神保健看護学の発展をはかり、広く知識の交流に努め、もって人々の精神の健康と福祉に貢献することを目的として1990年に発起し1991年に発足しました。現在では、会員約1400人を集め、精神保健看護の学会としては国内最大規模となりました。例年、全国の精神科臨床の第一線で活躍されている看護職、精神保健看護学関連分野の教育者や研究者、精神保健福祉の様々な専門職を中心に1,000名以上の方が参加されています。近年は、専門看護師や認定看護師などの高度実践看護師、精神障害の当事者や家族も多く参加されています。新型コロナウイルス感染症の影響で2020年度よりオンライン開催となっておりましたが、第33回学術集会では、会場とオンラインの両方を活用したハイブリッド形式での開催を予定しております。
さて、世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大は、世代による分断や社会的孤立、経済格差などの我が国が抱える課題の顕在化をもたらしました。これらの課題は、人々の心の健康に大きな影響を与えています。
私たちは、どのような状況に置かれても、自分らしく生きがいをもって生活できる地域共生社会を目指してきました。精神保健看護は、精神障害者や精神的不調を抱える人を含め、あらゆるライフステージの全ての人を対象として発展してきましたが、孤独や生きづらさを感じる人々へのさらなる貢献が期待されています。例えば、複合的課題を持つ世帯への支援や精神障害者の権利擁護は古くて新しい課題といえます。
あらゆる人の心の健康の保持と増進、および、精神障害者の社会参加の第一線を担ってきた精神保健看護が、多様な背景をもち、多様な環境にある人々を包摂する社会の実現に向けて貢献しようとする時、これまでの枠にとらわれずその対象と方法を大きく広げることが求められていると感じます。
神戸市は、古代から港町として発展し、幕末の開港以降は国際貿易都市として多様な外国文化を取り入れつつ独自の文化を築いてきました。また、一瞬にして尊い命と街を破壊した1995年の阪神・淡路大震災から見事な復興を遂げ、震災から得た教訓や災害についての知識を広く発信し続けています。多様性を受け入れることへの寛容さと困難に立ち向かう力強さをもつこの街で、精神保健看護がめざす多様性と包摂性の実現にむけて、ともに考える機会にしたいと考えております。
ぜひ多くの皆様のご参加を頂き、活発な議論と交流ができれば幸いです。奮ってのご参加をお待ちしております。
- 日本精神保健看護学会第33回学術集会・総会
会長船越 明子
(神戸市看護大学看護学部)